鳥居花音 1stアルバム Secret Taleより
声優のことは詳しくなく、名前を何人か知ってる程度だったのですが、水夏で白河さやかと水瀬小夜を演じた鳥居花音には興味がありました。
調べると、今は活動していなくて引退しているということ、歌手活動もしていたことが1つの理由でした。そうして買った1枚のCDと攻略本に書かれたコメント、秘匿された素性(声優界では普通かもしれないけど)が、鳥居花音のファンになるきっかけになります。
私にとって、彼女はウラジミール・マヤコフスキー(詩人)、セルゲイ・プロコフィエフ(作曲家)、カルティエ・ブレッソン(写真家)等の作家と同じ位置にありました。
私が初めて買った、鳥居花音が最初に出した1stアルバム「Secret Tale」の1曲目「オトメ達の休日」には以下の歌詞があります。
”最高の友達 それは間違いないから だからこれは聞いて帰りの電車賃はあなたもち”
この歌は女の子が渋谷まで片道820円かけて行って待ち合わせの場所に行ったけど1時間待たされてそれでも仲良く友達と遊ぶ歌なんですが、820円の電車賃に驚いていること、遅刻した罰に奢らせようとしたけど結局割り勘にして、でも最後に電車賃要求する、綺麗事じゃない歌で、凄く人間味がある歌だなと思いました。
声優の歌ってキャラソンアニソンの延長だろうと思って聴いたら、こんな歌を歌うし歌唱力もあるんだって感銘を受けました。そうして「他にもいい曲があるに違いない」と夢のような確信を得たのです。
同じ時期に水夏&WaterSummer 夏の想い出ガイドという、全年齢対象版の水夏の攻略本を買いました。その巻末にある声優からのコメントで、鳥居はこのように述べています。
”さやかの生い立ちを理解すること”
水夏 2章のヒロイン白河さやかはふとしたきっかけでエロ本を拾います。それをどうするかは選択肢によりプレイヤーに委ねられていて、そこに燃やすという選択肢があります。
さやかさんは身の回りの道具を上手く使って見事にエロ本を燃やしたのですが、この時歌を歌いながら燃やしていきました。
このシーンを1人遊びが上手だと評した鳥居は、本当にさやかさんのことが好きなんだなと思いました。あとサインが綺麗ですね、「鳥居花音」の「居」の字がかっこよかった。私が鳥居花音のファンになったきっかけはサインが綺麗で、さやかさんの事が本当に好きで、人間味のある歌を歌うから----という笑ってしまうぐらい小さな事からでした。
それから私は、「鳥居花音がどんな人物であったのか」を理解することを目標とし、鳥居がこれまでに世に出したCDを集め始めました。運良く、半年で8割近くが揃いました。まだ全てを集め切れていませんが、やがて全て揃うはずです。出演した作品もちまちま集めて、実際にプレイしています。ファンブックの購入も検討しています。今はSNSで近況報告をする声優は多いですが当時は無かったので、ましてや素性が秘匿されている声優の人物像はファンブックや雑誌のインタビューでしか分からないと思うからです。業界では当たり前なのかもしれませんが彼女の秘密主義のように隠され、何らかの媒体で小出しにされる人物像はどこか惹かれるものがありました。
鳥居花音のキャリアとその事跡を検討していくことは、忘れ去られた作品の再発見と結びつかずにはいないでしょう。1990年代後半より美少女ゲームの声優として現れた後、2000年代に多くの作品に出演し、注目を集めました。その仕事は一般の人には決して広く知られることは無く、2008年を最後にゲームのクレジットから、2011年にCDから姿を消した。
このノートではそんな鳥居花音の軌跡を、これから長い時間をかけて振り返り、検討していきます。
鳥居花音(とりいかのん)
10月1日生
1990年代後半より美少女ゲームの声優として脚光を浴び、その後多くの作品に出演する。
■主な出演
白河さやか(水夏 CIRCUS 2001年)
水瀬小夜(水夏 CIRCUS 2001年)
綺堂さくら(とらいあんぐるハート JANIS 1998年)
葵優子(wind-breath of heart- ファンブック2 minori 2002年)
■アルバム
Secret Tale(ivory 2001年)
Loose Rouge(ivory 2002年)
aile(ivory 2003年)
2008年、D.C.the originを最後にゲームのクレジットから姿を消す。